Interview

社長のせなか

株式会社アヤベ洋菓子

綾部 哲嗣社長インタビュー

【第1回】 2017.10.22

 

親から学んだこと、学ばなかったこと

鈴木:今日はふだん話さないことをドンドンうかがいます。

綾部:よろしくお願いします。

鈴木:まずは、ご家族の話から。綾部さんは2代目社長と聞きました。小さいころ、親の仕事にどんな印象を抱いていましたか?

綾部:とにかく、がむしゃらに働いていましたね。父は寡黙な働きもので、母は根性のある働きもの。住まいの1階が工場だったので、幼いころから両親の仕事ぶりを見ていました。台車に乗って遊んだりしながら(笑)。

父はマジメな倹約家なので、贅沢とは無縁の生活でした。高い車や洋服などは一切買いません。私の塾通いや中学受験も大反対されましたが、母の後押しで実現。お金の苦労を感じることなく、大学まで卒業させてもらいました。両親には感謝しています。

鈴木:人生において「お金」と「仕事」は必須の分野なのに、学校では教えてくれません。お金や仕事について、親から学んだことはありますか?

綾部:具体的に教わった記憶はありません。ただ、“生き方”については母から教えられました。「ウソをつかない」「人の悪口をいわない」といった基本的なことについて、口をすっぱくして指導されましたね。

特に印象に残っているのは、「おてんとさまが見ている」という考え方。部活や勉強など、頑張らなければいけないときに励みになりました。

鈴木:実は僕の親も経営者なんです。秋田県で建築・土木資材の販売会社を営んでいました。

当時は公共事業が活況でしたが、なかには夜逃げするお客さんも。だから、夜逃げの情報が入ると両親が現地に急行していました。でも、金目のものは残っていないので、わが家の戦利品は古びた小説くらい。そんな環境のせいで、小さいころからお金に対する恐怖を感じていましたね。

綾部:お金そのものより、仕事がなくなる恐怖は覚えています。取引先が減っていく苦労を間近で見ていましたから。

鈴木:よく考えると、ウチも父が寡黙、母は厳しい性格です。そういうほうがうまくいくんでしょうね。

綾部:そうかもしれません。当社の取引先が減ってどん底のころ、母は還暦間近。でも12月は夜中までクリスマスケーキのスポンジをつくっていました。朝になると父をたたき起こして、「行くわよ!」と営業に連れていく。どっちが社長かわかりませんね。

鈴木:僕が高校生のころ、父が精神的にまいって入院してしまいました。医学的な原因は不明ですが、おそらく事業のプレッシャーだったんでしょう。そのとき母は心配するどころか「原因がわからないのに入院なんかしやがって!」と怒っていました。いま考えるとキョーレツですよね(笑)。

綾部:私が高校生のころも父が病気で倒れ、母と叔父が会社を切り盛りしていました。

鈴木:もともと家を継ぐことは決めていたんですか?

綾部:小さいころから、なんとなく意識していました。でも、「継いでほしい」と明言されたことはありません。

私がウチに入ったのは23歳、社会人2年目のころです。当時は大口の取引先がなくなって、業績が急激に悪化。工場は広いのに、社員1名とパート8名にまで縮小してしまいました。そのせいで夫婦ゲンカも絶えなくなり、「だったらオレがやるよ」と仲裁に入ったのです。

鈴木:たとえば、家業が別の業種でも継いでいましたか?

綾部:そう思います。当時は、自信満々で「オレなら立て直せる」と確信していましたから。また、商売自体に興味もありました。

私は親友の姉と結婚したんですが、そのお父さん(現在の義父)が経営者。高校時代から家を訪れ、商売の話を聞くのが大好きだったんです。金勘定が苦手なウチのおやじとは違い、透徹した経営論をもっていましたね。

鈴木:なぜか、そういう人にはそういう環境がめぐってくる。不思議ですよね。僕の義父も開業医なので、お金の使い方や物事の捉え方はスゴく勉強になりました。実のお父さんは商売ベタだったんですか?

綾部:ええ。夫婦ゲンカに割りこんだ際、父の話を聞いて驚きました。「お菓子屋の基本は“おり単価”。原材料費の2倍が卸価格だ」と説明していたんです。でも、おかしいですよね? つくる手間はお菓子の種類によって違うのに、一律2倍で儲かるわけがない。そりゃ母の苦労も絶えないですよ。

鈴木:昔ながらのお菓子屋さんの感覚なんでしょうね。

綾部:私が入ってからは母と団結して会社を立て直しました。そこからが第2創業期。家業から企業へ生まれ変わっていく時期です。

鈴木:いつごろ業績は回復したんですか?

綾部:すぐですよ。入社1年目から私が先頭に立って、大口の取引先を次々と開拓していきました。その皮切りとなったのは、全国に店舗を展開する大手カフェチェーン。お店で出す洋菓子をOEMで提供することになりました。

鈴木:なぜ、いきなり大きな仕事が取れたんですか?

(第2回に続きます)

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