Interview

社長のせなか

牧野電設株式会社

牧野 長社長インタビュー

【第1回】 2018.06.05

 

女性の新卒採用から、すべてが変わった

鈴木:以前、合同の採用イベントでお会いしましたよね。今日はよろしくお願いします。

 

牧野:お久しぶりです。よろしくお願いします。

 

鈴木:電気設備工事の会社と聞いて、飾り気のないオフィスを想像していましたが、とってもカラフルですね。音楽が流れているのもステキです。

 

牧野:ありがとうございます。でも、最初からこうだったわけではないんです。ある女性の新卒採用がきっかけで社内の雰囲気が変わっていきました。

 

鈴木:では、そのあたりの経緯から聞かせてください。

 

牧野:私は2代目です。父が社長を務めていた2011年から、人事責任者として新卒採用をスタートさせました。当時の社員数は11名。いずれ事業を継ぐための下準備として、未来を担う人材を集めようと。

 

鈴木:初めての新卒採用となると、不安はありませんでしたか?

 

牧野:もちろんありました。ウチのような無名の中小企業に応募してくれるのかって。そこで「文系も女性も歓迎」というメッセージを打ち出したところ、会社説明会に90名以上も参加してくれたんです。

案の定、その大半が文系の学生。女性も2~3割いました。当時は東日本大震災の影響で建設やインフラ関係の業界を志望する学生が多かった。なのに、文系を採る会社がなかったので、ウチに集まったようです。

 

鈴木:そこから女性を採用したんですね。

 

牧野:ええ。採用した5名中、女性は2名。事務職も含むので技術職の女性は一人だけ。彼女がキーパーソンになりました。

彼女は新卒1期生であり、文系出身。入社初日に「電気って、プラスとマイナスがあるんですね!」と驚いていました(笑)。こんな状況はウチも初めて。3日間つきっきりで研修を行い、基本的な知識や図面の見方などを一つずつ教えていきました。

 

鈴木:彼女の存在が会社にどんな影響を与えたんですか?

 

牧野:予備知識がなくても技術者になれるよう、研修プログラムを充実させました。また、彼女のインタビュー記事を自社の採用ページに載せたことで、それを見た女性が翌年にも入社。「文系女性が活躍できる会社なら、自分も技術者になれるかもしれない」と感じてくれたそうです。

その頃から、女性のための職場づくりにも力を入れるようになりました。たとえば、オフィスの内装や制服を刷新。女性社員の意見を採り入れて、緑やオレンジのカラフルなイスを並べました。トイレの改装にも、お金をかけましたね。

 

鈴木:いい人材を集めるには、オフィスづくりが大切です。なかでも女性を採用するには、トイレって重要ですからね。

 

牧野:はい。子どもの誕生日に休みがとれるように、就業規則も変更しました。今後は女性社員の美容院代を補助する予定です。

 

鈴木:おもしろいですね。

 

牧野:彼女が与えた影響は、ほかにもあります。ウチを卒業したときに大切なヒントをくれまして。

 

鈴木:え? その女性は退職したんですか? どうして?

 

牧野:もともと彼女はウチに入社する前に大手デベロッパー(開発事業者)を志望していました。でも就活がうまくいかずに、ウチに来てくれたんですね。そんな背景があって、入社6年目にやっぱりデベロッパーでの都市開発をあきらめきれないと相談を受けました。

その直前まで大手デベロッパーのプロジェクトを2年間も担当していたので、憧れが再燃したようです。ウチの仕事は電気設備工事の設計・施工管理。デベロッパーに行けば、商業施設やマンションの企画立案から携われます。

ただ、彼女の気持ちも揺れていました。大変なプロジェクトで技術者としての自信をなくしたのか、新しいことに挑戦したいのか、自分でもわからないと。それで「ずっとモヤモヤを抱えるくらいなら、面接に行っておいで」と送り出しました。

鈴木:え? 辞めてほしくない大事な社員だったのに、どうして「面接に行っておいで」なんて言えたんですか?

 

牧野:正直に言うと、そんな大企業に簡単に入れないだろうとタカをくくっていたんです。ところが、「受かっちゃいました」という報告が来て。そうなればもう、ひっこみがつきません。「おめでとう」と笑顔で祝福しました。

 

鈴木:内心は「しまった」と後悔しましたよね?

 

牧野:いえ、それが不思議と誇らしい気持ちになったんです。しかも、ここに会社の新しいカタチがあるんじゃないかと思いました。

社員が辞めるのは損失ですが、人を育てるノウハウを蓄積すればいい。ウチのような小さな会社から、大企業に転職できるなんてスゴいことです。この会社に入れば、大手で通用するスキルが身につくって証明ですから。

ウチの教育ノウハウで、仮に1年間で一人前の技術者に育てあげれば、10年後に辞めても9年分は回収できる。終身雇用にこだわらず、人を育てて世に送り出すという役割でもいいですよね。

 

鈴木:なるほど。「人は会社の財産」という意味で「人財」と表現することがありますが、彼女の立場で考えれば、牧野電設の経験が一生の財産になったわけですよね。そのおかげで、夢が実現したんですから。人財である従業員にとっても「この会社で働くことが財産」と思えるような“財産の交換”こそ、理想的な関係なのかもしれません。

 

牧野:そうですね。そういう仕組みができれば、辞めそうな社員がいても一喜一憂しなくてすみますし、社員も会社に依存するのではなくステップアップの場として大切にできる。「牧野電設の出身者は優秀」という評判になれば、会社のブランドイメージも向上する。彼女はそこに気づかせてくれました。

 

鈴木:ウチの会社も離職者は出ますが、後で感謝されるとうれしいですよ。「あのとき教わったおかげで、いまがあります」なんて。

やっぱり、生きていくといろんなきっかけがあって、人の縁がつながっていく。それが日本中の組織に広がると、会社の業績も安定するのでしょう。

 

(第2回に続きます)

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