Interview

社長のせなか

株式会社BIG UNIT

橋本 太郎社長インタビュー

【第2回】 2018.09.10

 

「元プロ野球選手」以外の武器が必要だった

 

鈴木:橋本さん以外に会社の創業メンバーはいるんですか?

橋本:取締役の岡本直也がいます。彼は横浜ベイスターズ時代の先輩で、メキシコやアメリカ(ニューヨーク・ヤンキースとマイナー契約)でもプレーした選手。帰国後に引退して、「一緒に会社をつくろう」と意気投合しました。

じつは、焼肉に対するこだわりはなかったんですよ。たまたま岡本が牧場とつながりがあったので、まずは焼肉屋をやろうと。

 

鈴木:どんなつながりがあったんですか?

 

橋本:岡本の高校時代の後輩に、牧場主の息子さんがいたんですよ。神戸牛(但馬牛)で有名な「川岸牧場」というところ。ちょうど僕らが創業した頃に、息子さんがこの牧場の牛を販売する肉屋を始めて。

通常、牧場で育てた牛の肉は卸業者が買ってセリに出します。最終的に飲食店に届くまで、2~3軒の卸を経由するんです。でもウチの場合、息子さんが切った肉を直で送ってくれる。だから、高級な神戸牛をリーズナブルな価格で提供できるんです。

 

鈴木:高校時代の後輩というのは、野球部の後輩ですか?

 

橋本:ええ。それまで直取引は断っていたそうですが、特別に認めてくれました。牧場主のお父さんに会いに行ったら、「お前らがやるならいいよ」って。

ウチには食通のお客さんもいらっしゃるんですが、そういう人たちって有名な牧場へあいさつに行ったりするんですよ。それで、あるお客さんが川岸牧場を訪れたらしく、「このいい肉はどこに卸すんですか?」と聞いたら、「BEEF MANです。息子の先輩がやってるんで」と言っていたそうです。本当にありがたいですね。

 

鈴木:スポーツをともにした縁って、その後に生きてくることが多いですよね。僕も会社をつくったのは、学生時代の部活動のメンバーがきっかけでした。

大学で駅伝をやっていたんですが、そのときのキャプテンが実業団に行って、30歳くらいで引退したんです。新しく事業を始めると話していたので「なにをやるの?」って聞いたら、体育の家庭教師をやると。でも、当時まわりには「体育の家庭教師なんて誰が頼むんだ」とバカにされたらしいです。

そのとき、僕は簡単なホームページを作れるスキルがありました。だから、彼に相談されたときに「ネットで集客したらいけるんじゃないか」とホームページを作ってあげたんです。それが、起業の初仕事になりました。やっぱり縁が大事。もし橋本さんの後輩が漁師の息子だったら、寿司屋を開いていたかもしれないですね。

 

橋本:そうですね。変なこだわりやプライドはいりません。だから、焼肉じゃなくてもよかった。ただ、どんなジャンルであれ、「元プロ野球選手」という看板のほかに、もうひとつ武器が必要だとは感じていました。

 

鈴木:その発想はどこで生まれたんですか?

 

橋本:「元プロ野球選手」というのがウリなら、プロ野球を引退した人なら誰でもできますよね。僕より有名な選手なんてゴマンといる。彼らに勝つためには、もうひとつ武器が必要です。野球でたとえると「いまはカーブしか武器がないから、フォークも覚えないと試合に勝てない」といった心境ですね。

 

鈴木:なるほど。もうひとつの武器が、直取引できる高品質の神戸牛だったと。武器が2つそろったとはいえ、飲食店を始めるにはお金がかかります。お金のピンチはありましたか?

 

橋本:数えきれないほどあります(笑)。2〜3年目は「ヤバい、月末払いのお金が足りるかな…」と冷や汗をかくことが多かったですね。

 

鈴木:社長に取材をしていると、「もうヤバい!お金がない!」というときに、誰かが助けてくれることが多いと感じます。取引先の社長が「経費を使わなきゃいけないから、先払いでもいい?」と突然言ってくれてピンチをまぬがれた―なんて話を聞くのですが、橋本さんはいかがですか?

 

橋本:そういうこともありました。でも、普段から生意気な態度をとっていたら、「先払いでもいい?」と言ってもらえないはず。だから、本当の意味でピンチが訪れるとしたら、お金ではなく人の問題じゃないでしょうか。普段から取引先といい関係を築いていれば、銀行を紹介してくれることもあります。

 

鈴木:店をつくった後、広告宣伝はどのように?

 

橋本:ウチはお弁当を宅配してるんですよ。それがテレビ番組のロケ弁で評判になったり、横浜スタジアムに来たヤクルト(東京ヤクルトスワローズ)の選手が注文してくれたり。

あとは「東京ガールズコレクション」の楽屋に大量の焼肉弁当を差し入れました。モデルの子たちが写真を撮って、「BEEF MANのお弁当おいしかった」なんてSNSで発信してくれるからです。

 

鈴木:なかなか戦略的ですね。そういった手法はどこで学んだんですか?

 

橋本:引退後にアルバイトで入った会社です。そこは飲食店のほかにアクセサリーショップやコスメショップを運営していました。せっけんの「SABON」ってご存知ですか? あのお店を運営している会社です。

僕が2008年に入社した頃、「SABON」は1店舗しかありませんでした。その後、モデルやJリーガーに使ってもらったりして、どんどん店舗が増えていったんです。「こうやって広げていくのか」と間近で学びましたね。

 

鈴木:やっぱり、基礎からプロセスをふんだことが役立ったんですね。

 

橋本:広告宣伝じゃありませんが、草野球で販路を広げたこともあります。デパートの役員に野球好きの方がいて「一度試合をしてくれ」と頼まれたんです。

その人に「本気で戦ってほしい」と求められたので、「わかりました。僕たちが勝ったらウチの弁当を置いてください」と約束して。もちろんボコボコに負かして、弁当を卸させてもらいました(笑)。改めて振り返ると、ぜんぶ野球をやっていたおかげですね。

 

(第3回に続きます)

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