Interview

社長のせなか

株式会社B.L.S.

渡辺 堅社長インタビュー

【第2回】 2020.01.24

お金が無くなると人は怒り出す。

対立後に直販にかけて独立

 

鈴木:共同経営をしていた社長とはどんな衝突があったんですか?

 

渡辺:自分の中には「絶対こうした方がいい!」っていう意見がありました。借金も返せるし、絶対いい方向に向かうという意見です。でも、専務の立場だと通らないことが多かったです。

 

鈴木:バブルが弾けて借金が膨らんでいく中で、利益を残すためには、売り上げを上げるか、経費を下げるかだと思うのですが、ご自身の意見は、どんな意見だったのですか?

 

渡辺:経費は限界まで落としていたので、僕は、売り上げを上げることに焦点がいっていました。ところが、社長は、とにかく贅沢をしない!ティッシュ1枚まで「無駄に使うな」と怒り始めました。極端になってしまったんです。その頃の会社の雰囲気はとても悪かったです。社内が、僕と社長で対立していました。2011年に独立するのですが、その手前5年間は、社員もかわいそうでした。来ていても楽しくないだろうなって。

 

鈴木:渡辺社長の売り上げを上げる策はどんなものだったんですか?

 

渡辺:僕はネット販売をやればいけると思っていました。直販に力をいれるべきという主張だったんです。「絶対やれば上がる!」「いいから、俺の好きなようにさせてくれ!」って。でもやらせてもらえなかった。「そんな勝算はない。今の下請けの仕事を増やして工賃で稼ぐしかない」と言われました。

でも、そんなのは、たかが知れているし、どんなに急いでもひとりの人間が1日10本も20本も磨けません。スピードは変えられないので限界があります。その中で借金を返そうなんて無理があるので、対立していました。

 

鈴木:社長はあくまでOEMで、下請けとして稼いでいくというスタンスだったんですね?

 

渡辺:はい。そうです。それに対して僕はどっちかというと末端の消費者に売っていく考えでした。メーカーとしての母体はちゃんと残しつつも、何かに移行をしていかないと先は見えません。

 

鈴木:ジュエリーメーカーの工賃って売値に対して、どれくらいのものなのですか?

仮に50万円で売れるものがあるとしたら、工賃というか、原価はどれくらいなんですか?

 

渡辺:4分の1くらいですね。つまり、自分たちがエンドユーザーに売ったら、価格を4倍にせず、3倍くらいに落としても、お客さんは安く感じる。

だから、どう考えても上手くいくに決まってる、って思っていました。でも、社長は「そんなことしても無理だ」と。何か僕のやろうとしていることが気に入らなかったんです。

 

鈴木:それで、自分の方針を実現するために独立したんですね。

 

渡辺:はい。2011年に独立しましたが、その3年くらい前から「別れたい、別れたい」って、ずっと言っていました。そして、借金も背負うから、社員も僕に付いてきたい人だけ来たらいいからと、独立に踏み切りました。そして7人を連れて独立しました。

 

鈴木:独立してからの状況は?

 

渡辺:下請けとしてのオーダーは順調にいただきました。僕が独立するということで卸屋さんが協力してくれたんです。本当に感謝しています。

ネット販売もすぐスタートしたのですがこれは、泣かず飛ばずでした。まったく売れませんでした。

 

鈴木:目論見がハズれた?

 

渡辺:はい。ところが、諦めずに手を打っていけば、何かのきっかけで弾けるものです。最初の8ヶ月間、毎月の売り上げが20~30万円しか出ず、もうあきらめようかと考えるようにもなった9ヶ月目に入って、突然300万円売れました。

 

鈴木:いきなり10倍以上の売り上げになったんですね。

 

 

渡辺:はい。それは、たまたまひらめいたプラチナ900を値段据え置きでプラチナ950にして、強度アップ、純度アップをネットで謳ったのです。そしたら、売り上げが“バンっ”と上がりました。

 

鈴木:プラチナ950?それはそんなにインパクトがあることなんですね。

 

渡辺:いえ、これがインパクトあるとは、正直、わかりませんでした。でも、女性はよく見ていますね。同じ値段なら、900より950の方が良い。女性って価値がわかるんですよ。「純度と強度を上げて価格は一緒で打ち出せば売れるかな?」って軽いひらめきでやってみただけですから。お陰でゴールドも引っ張られるように売れました。「良かった諦めないで」という感じです。

 

鈴木:まさに「成功はあきらめの数センチ先」にあったわけですね。前の会社の社長は、今何をされているんですか?

 

渡辺:OEMをやってるとは噂で聞いています。今はまったく付き合いがなくなってしまいました。

 

鈴木:そういえば、役員の方、もう1人いらっしゃいましたよね?その方はどうされているんですか?

 

渡辺:彼は元々僕が連れてきた人間で、僕が独立するときに付いてきました。実はうちの妹の彼氏だったんです。大学でうちの妹と付き合っていて、大学を卒業したときに、妹から「お兄ちゃんの会社に行きたい」と話をされて、「いい大学を出ているから、もっといい企業に行けるのにいいの?」と聞いたら、それでもいいと言うので彼は入りました。今も役員として、当社の資金繰りを任せています。彼がお金を回してくれています。

 

鈴木:今でも妹さんとお付き合いされているんですか?

 

渡辺:いえ、妹は病気で亡くなっています。

 

(第3回に続きます)

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