うまCEO学園(うましおがくえん)特別授業開催

2024年10月19日(土)、日比谷スカイカンファレンスにて「社長チップス!うまCEO学園(うましおがくえん)の特別授業」を開催しました。社長、学生、学校関係者など約70名が集まり、近年話題となっている「人財不足」や「人財育成」の課題について、有識者からの講演やトークディスカッション、社長と学生がともに解決策を考えるグループディスカッションを行う内容です。企業側の考えだけでなく、学校や学生から意見を取り入れることで、意識を見える化し、改善に向かうことを目的としています。

はじめに、主催の社長チップス!うまCEO学園・代表の西川真理子から挨拶が行われ「うまCEO学園は社長が先生を務め、汗も涙もたっぷりのうまくて味わい深いリーダーの人生が学べる場所です。一方で、社長の皆さんも新しい価値観を次世代から学ぶ場でもあります。今日は真剣勝負、ぜひ全員が意見を出してください。社長、学生、学校関係者が一堂に会するこの機会だからこそ生まれるアイデアがあるとワクワクしています。」と話しました。

登壇では「途上国の小児医療現場で命に向かい続ける理由と日本の教育への思い」と題し、特定非営利活動法人ジャパンハート最高顧問・ファウンダー、小児外科医の吉岡秀人氏の講演が行われました。吉岡氏は1995年に単身でミャンマーへ渡り医療支援を開始し、現在も開発途上国の医療現場の前線で活動を続けています。「医療とは患者の人生の質を上げること」という大切な気づきなどを、実際の映像を用いながら講演。2004年に一人でスタートしたジャパンハートが、現在大きな組織となってたくさんの命を救っていることを伝え、今の環境に感謝し、諦めずに挑戦し取り組み続ける大切さを伝えました。

ジャパンハート最高顧問/ファウンダー/小児外科医 吉岡 秀人 氏

続いて「次世代が職場で個性を発揮し、最大限に成長できる環境づくり」をテーマに、企業や行政向けの研修などを行うユーノーJUNO(愛知)代表の柴田朋子氏が登壇しました。世代間のギャップや固定概念に触れ、職場での人材育成における課題について説明。個々の成長を促進するためには、職場が能力に応じた挑戦を提供し、適切な支援やフィードバックを通じて成長を実感させることが重要だと伝え、参加した社長たちは熱心に耳を傾けていました。

ユーノーJUNO /  代表 柴田 朋子 氏

トークディスカッションでは、「職場で最大限の成長を得るには、企業に何を求めるか」をテーマに、教育機関向けの人財育成や企業研修などを行う株式会社ウーマンプラスアルファ(東京)の菊地香江社長、児童発達支援などを行う株式会社ダンデライオン(千葉)の杉野貴彦社長、ユーノーJUNOの柴田氏、名城大学の竹内英人教授がパネラーとなり、主催の西川進行のもとディスカッションが行われました。教育現場や職場で感じた課題点が挙げられ、それぞれの専門的な視点から、承認とフィードバックの重要性や、失敗を恐れず通過点として捉える必要性について意見が交わされました。

左上:トークディスカッションの様子 右上:(株)ダンデライオン 杉野 貴彦 氏 左下:(株)ウーマンプラスα / 代表取締役 菊池 香江 氏 右下:名城大学 教授 竹内 英人 氏

専門家の意見を受けたところで、いくつかのグループに分かれ全員でのグループディスカッションをスタート。どのグループにも社長が入り、学生からは「インターンとして働いても、自分たちに企業の情報が見えなかった。もっと自分たちを信用してほしい」「上に行くためには、昭和的な価値観から脱却する必要があるのではないか」といった率直な意見が出されました。一方、社長からは「賢い選択だけではなく、ハズレを引くことを恐れないでほしい」との意見があり、会場は熱気に包まれました。ディスカッションの締めくくりとして、各グループで話し合った内容を学生が発表。慶應義塾大学、立教大学、国際基督教大学(ICU)、日本大学、東洋大学、神奈川大学、桜美林大学、大正大学などから参加した学生や早稲田実業高校の生徒などが発表しました。
発表された意見は、次のようなものでした。

大学生「自立した個人に対する承認とビジョンの一致が、企業に求められる重要な要素だと考えています。具体的には、まず、自立した個人に対する承認とは、社員や学生といった立場に関係なく、対等にコミュニケーションをとっていただけることです。 次に、ビジョンの一致については、自分が実現したい理想や、会社のビジョンや方向性が一致していることです。それによって、自分の力を最大限に発揮でき、主体的に動ける企業環境が生まれるのではないかと考えています。」

大学生「私たちのグループでは、第一に人事評価、第二に財務、第三にビジョンの一致という点が重要だという結論に至りました。まず、第一の人事評価についてですが、職場に学生が求めるものとして、ワークライフバランスが非常に重要だと考えています。現代の若い世代の中には、仕事に夢を抱くよりも、趣味やプライベートのためにお金を稼ぐ手段と考えている人が多くいます。そのため、趣味やプライベートの時間を確保できることや、そのための収入が確保できることが大切です。また、学生が働く際に人事がしっかりとサポートし、人間関係のトラブルで辞めてしまうことがないよう、適切な調整が求められます。次に、財務面でも同様に、生活を維持できる最低限の賃金が保証されることが必要です。企業側は粗利の計算だけではなく、働く学生や労働者との調整を行い、生活基盤を支えるための仕組みが求められます。 最後に、ビジョンの一致についてですが、やはり職場は『ワクワクする』環境であることが大切です。せっかく働くなら、楽しくてやりがいのある場所で働きたいという考え方が共通していました。そこが1番企業に求められているのではないかと結論づけました。」

大学生「私たちのグループでは、3つの提案をしました。まず、私が話したのは、やはり『自由度』が重要だという点です。学生の立場では、個人的に企業に最も求めるものは自由度だと感じています。私は大手企業とスタートアップの両方でインターンを経験しましたが、スタートアップが好きな理由は、自由度が高く、自分から積極的に提案し主体的に新しいことに取り組める点です。そこにある自由度が本当に魅力的だと思います。ただ、私たちが話し合った中で、自由度に加えて『コミュニケーション』の重要性も感じました。自由に何かをやりたいという気持ちがあっても、その責任をしっかりと取ることができなければ意味がない。だからこそ、上司とのコミュニケーションをしっかりとりながら、自由に提案し、それを形にしていける仕組みが大切です。この自由とコミュニケーションが、企業に求める重要な要素だと考えています。」

大学生「自分たちのやりたいことと得意なことをいかせる環境が最も大切だと感じています。その理由は、学生として自分のやりたいことに取り組みたいのはもちろんのこと、得意なことでなければ長続きしないからです。例えば、やりたいことでも、結果が出なければモチベーションが下がってしまいます。そうした点を考慮して、自分の得意なことや興味があることを活かせる環境が企業にないと、長く続けるのは難しいと思います。結局、そのような環境が最終的に求められるものではないかと感じました。」

大学生「私たちのグループでは、学生の立場と企業の立場から、2つの観点についてお話ししました。
まず1つ目は、目的に関しての話です。これまでの意見では、学生が自分のやりたいことや目的を明確にできていないという点が挙げられました。一方で、企業としては、その目的を持ってどのように取り組むかが非常に重要であり、企業はその目的を応援することしかできないというお話がありました。しかし、目的がない場合でも、働く中でそれをみつけ、さまざまな経験を積むことが大切だという意見もいただきました。
もう1つの観点は、承認と評価についてです。学生からは、自分の評価と他人の評価のどちらを重視すべきという疑問がありました。これに対し、企業の方からは、どちらを重視するかではなく、企業として評価基準を明確に定めることが重要だとおっしゃっていました。例えば、『この基準に達したらこのような評価をする』と明確にしないと、学生や社員が迷い、企業としても責任を果たせなくなるとのことです。また、評価の機会を何か月後に設定するのではなく、日々のコミュニケーションが大切だとも言及されました。 私を含めたZ世代は、挑戦や失敗を恐れる傾向がありますが、企業から挑戦する機会を与えていただけること、もちろん主体的にも動いていきますが、そうした機会を企業に求めているのだと思います。」

大学生「私たちのグループでは、職場において最大限に成長するためにはどうすればいいかという点を中心に話し合いました。その前提として、チャレンジのハードルをいかに下げられるかが重要なテーマとなりました。具体的には、社内で副業をするという案が出ました。外部で副業を行う場合は高い専門性が必要で難しく感じることも多いですが、社内であれば、他部署で自分のやりたいことに取り組める環境が整っており、生活リズムを大きく変えずにチャレンジしやすくなるのではないか、という意見がありました。
また、今まで経験したことのないような大規模なプロジェクトに参加したり、自分の領域を超えて新しいフィールドに挑戦する機会を増やしたりすることも話題に上がりました。これに加えて、自分の数値目標を上司から押し付けられるのではなく、自ら設定できるようにすることで、責任を持って取り組める環境が重要だという意見もありました。もちろん、こうしたチャレンジのハードルを下げたり幅を広げたりするには、ある程度の余裕がある企業でなければ実現が難しいという指摘もありましたが、それが実現すれば、その企業に勤める人たちは最大限の成長を遂げられるのではないか、という結論に至りました。」

大学生「我々のグループのディスカッションでは、まず成長よりも社内の魅力を最大限に活かすことが重要だという意見が出ました。人生には24時間があり、そのうち約8時間は仕事に充てられるため、人生の3分の1が仕事に費やされることになります。だからこそ、働きたいという思いが強ければ強いほど、成長につながるのではないかという前提で話を進めました。
最初に出た提案は、新人教育の強化です。先ほどもお話しされていましたが、若者の可能性を潰すのではなく、育てることが大切だと感じています。たとえば、昭和の時代のように上司の背中を見て学ぶだけではなく、自分で考えて行動することが成長につながるという意見もありました。一方で、具体的な指示がないと分からないという人もいるため、教育の方法を見極めることが重要だということになりました。また、新人教育の一環として、最初は営業部に配属されても、他の部署の業務を少しずつ経験することで、会社全体を理解する手助けになると思いました。
次に、社内でのコミュニケーションの重要性が挙げられました。特に日本では、自分の思いや不満を言えないことが多いと思います。例えば、同僚には言えるが、上司には言えないということがよくあります。この問題に対処するためには、社長と1対1でミーティングを行うことで、部下が自由に意見を言える環境を作ることが重要だという意見がありました。
最後に、責任者のリーダーシップのバランスについての意見が出ました。上に立つ人間として、協調性が非常に大切です。みんなの意見を聞くことは重要ですが、自分の信念を貫き通すことも本当のリーダーシップです。これを実践することで、みんなが『この人についていきたい』と思い、最終的には職場での成長につながるのではないかと考えています。」

高校生「私自身も、評価というのはどの場面でも重要な課題だと感じています。会社と同じように学校でも先生から生徒に評価が返ってきます。良い評価もあれば、そうでない評価もありますが、その際にどの観点を重視しているのか、企業の方にお聞きしました。企業としては、やはり『自分が何をやりたいか』『どんな目標を持っているか』という点を重視しているとのことでした。私たちはまだ16、17歳で、右も左もわからないというと言い過ぎかもしれませんが、どこを目標にして生きていくかはまだ定まっていない状況です。そんな中で、『いろんなことに挑戦してほしい』というアドバイスをいただきました。学校という限られたコミュニティの中だけでなく、こういった機会やイベント、さらには高校生対象のインターンなどに積極的に参加し、さまざまな企業を見てほしいというお言葉がとても心に響きました。今後もこのような機会があれば、ぜひ積極的に参加したいと思います。」

このようにグループディスカッションでは、主に「ビジョンの一致」「自由」「ワークライフバランス」の3つのキーワードが挙げられました。企業にはビジョンにもとづいた方針があり、時代の変化に応じた対応が進んでいますが、未来の担い手からの率直な意見を直接聞くことで日々のコミュニケーションが変わり、変革を起こせるのだと改めて実感した有意義な時間となりました。

全員で記念撮影を行ったあとの懇親会では、社長と学生、学校関係者におけるさらなる交流が実現し、雇用や人財育成などの社会課題を解決するための大きな成果と可能性を感じるイベントとなりました。

SHARE