倉庫係のアルバイトからIT社長へ!ホームページ制作やSDGs推進支援など経営者の頭の中を形に。世の中の常識やルールは一度疑うべき。
(株)ニンニンドットコム
代表取締役
鈴木 忍氏(東京)

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駅伝の名門である日本大学で学生時代を過ごした鈴木忍社長。箱根駅伝に出場することだけを考え陸上一筋で毎日を過ごしますが、出場が叶わなかったことで完全燃焼してしまい、大学に7年間在籍することに。その後もフリーター生活を送ることになります。
そんな中、文房具会社の倉庫係として雇われたアルバイト先でIT担当に任命され、知識や技術を習得したことから人生が一転。ホームページ制作などの依頼を受けるようになり独立されました。
「起業前のフリーター時代、一時はホームレスになるかと思っていました」と語る鈴木社長は、経営において苦難があったとしてもたいして辛いと感じないのだとか。世の中のウラオモテを見た人生観から、常識やルールなんて一度疑った方が良い、何でもアリなんだと語ります。そんな鈴木社長の塩辛い経営人生ストーリーと今後の展望とは。

倉庫係アルバイト、知識ゼロからIT担当に就任

マリコロ編集長:鈴木社長は最初フリーターだったと伺いました。Webマーケティングの仕事にはどのように出会ったのですか。

鈴木社長:学生時代、箱根駅伝への思いを胸に陸上ひと筋で燃え尽きてしまったので就職活動をする気にならず。なんとなくイラストレーターになろうかなと考えたことがきっかけで、画材が安く手に入りそうな事務用品屋でアルバイトを始めました。しかし入った後、企業向けの事務用品がメインの商社であることが判明しまして。思い描いていた事業内容ではなかったものの、事務用品を翌日のルート先ごとに品出しを行う倉庫の在庫管理を担当することになりました。

ところが、業界のIT化が一気に進んだことにより中間物流が削減され、倉庫業務が激減。代わりに増えたPCによる入力業務の担当になり、そこでPC操作を学びました。販売管理システムを覚えながら、営業成績や売上推移などの数字を提示するようにしたところ営業会議に呼ばれるようになり、ある日社長が言い放った「わが社もホームページを強化するにあたり誰かやりたい人はいないか」の一言に手を挙げたことから、ホームページ作成担当に就任することになりました。その時も変わらずアルバイトではありましたが、Web事業部の立ち上げを経験し、知識や技術を習得することができました。世の中が紙からデータ、リアルからインターネットへと変化する分岐点で混乱していた時期です。

アルバイトから社長へ「経営者の頭の中を形にする」

マリコロ:独立に踏み切ったきっかけは何でしたか。

鈴木:30歳を過ぎた頃、実業団を引退し体育の家庭教師になるという友人に相談を持ちかけられ、彼を応援する形でホームページを制作しました。さらには、事務用品屋で隣の席に座っていた社員さんが転職し、転職先の社長に私の話をしたことでその会社からもホームページ制作を依頼されました。これらの仕事を受けるタイミングで独立を決意した形です。当時付き合っていた現在の妻に「あなたは自分でやったほうがいい」と言われたことも大きかったですね。

マリコロ:アルバイトから会社設立。思い切った決断に思えますが、身近に経営者の方などがいらしたのですか。

鈴木:そうですね。父は秋田でガードレール・芝生・パワーショベルなどの建築・土木資材を販売する会社を営んでおり、妻の父は開業医です。また体育の家庭教師を始めた友人も起業家ですし、誘われていた制作会社の社長とも仲が良かったので、自然と周りに経営者がいた感じですね。

オフィスには、会社のマスコットキャラクター“ニンニンくん”もいました!

マリコロ:鈴木社長とは仕事をご一緒させていただく機会もありますが、いつも議題をスピーディーに整理され的確なコメントをされる印象があります。「経営者の頭の中を形にする」のが仕事と普段からおっしゃっていますが、依頼を受けているうちに仕事が形作られていったのですね。

鈴木:はい、事務用品屋の社長も同級生も、丸投げでお任せ状態でした。ホームページ制作にあたっては、お客様は誰か、お客様がこの企業に依頼する理由は何かという2点のヒアリングからスタートし、そこからは何も言わずに任せてもらいました。それを続けていたら、現在の事業に繋がったという感じです。

可愛がっていた社員がまさか…「死ね」の書き込み

マリコロ:今回、経営における失敗や挫折などの塩味エピソードを聞く記事ですが、恐る恐る、、エピソードを聞いても良いですか。スゴイ話が出てきそうです。

鈴木:起業前、30歳までアルバイトで人生の塩味が強烈でしたからね。フリーターとしてずっと生きていくんだと本気で思っていました。それゆえ大抵の事ではへこたれないのですが、創業から5年ほど経った頃、可愛がっていた社員から掲示板に「死ね」と書かれたことがありました。

新卒採用を始めたばかりのある夜、エゴサーチをしてみると「鈴木忍死ね死ね死ね」と出てきたのです。今でこそ笑って話せますが、当時はかなりショックでした。夜中にオフィスで一人寝泊まりし仕事に明け暮れているのに、「死ね」と言われている自分。切なくて人にも言えなかったのですが、可愛がっていた社員にだけ話してみると「許せないですね。自分が削除対応します」と言ってくれ、その後書き込みを消したと報告を受けました。その後、客先で打ち合わせを終え、彼と一緒に食事しているとき正義感で心がいっぱいになり「インターネットで企業に可能性をもたらすことがうちの使命だよな。その可能性を潰すような掲示板への書き込みは許せない。警察に被害届を出すよ」と彼に宣言すると、「すみません、僕がやりました」と告げられたんです。すぐには事態を飲み込めず、3回ほど聞き返しましたね。

キックボクシングがSDGsに繋がる

マリコロ:一番可愛がっていた社員さんが犯人とは、、これ以上つっこまないようにします。。
採用活動は今も積極的にされていて、最近はビーチバレー選手などスポーツ人材を採用されているんですね。

鈴木:私自身キックボクシングをやっていて、スイスに遠征に行くなどプロの試合にも出場しています。仕事をしながらプロ練習に参加する中でスポーツと仕事は案外両立できるのではと気づき、スポーツ選手を雇って自分たちの社名で試合に出場してもらおうと考えたんです。競技の指定は特になく、以前は総合格闘家もいましたね。

マリコロ:仕事とスポーツの両立のコツはありますか。

鈴木:女性は上手に両立できるのではないでしょうか。いま、一般社団法人WOMAN EMPOWERMENT PLATFORMの「カンガルー出勤」を広めるプロジェクトに参画しています。カンガルー出勤とは子どもを抱っこしながらお母さんが仕事をすること。男性はつい一つのことにのめり込みがちですが、女性は同時に2つのことができる人が多いというのが私の感覚です。ちょうどこの春新たに子供がいる社員が加わり、彼女に子どもを連れてきてみたらと言ってみたところ、先日一緒に出勤してくれましたね。

マリコロ:カンガルー出勤良いですね。私も0歳を育てながら仕事をしていますが、まさにいま必要な取り組みだと感じます。その他もSDGsにまつわる企業支援に力を入れていらっしゃいますね。

鈴木:キックボクシングで、日本政府SDGs推進本部 「次世代SDGsプラットフォーム」キャプテンなどを務める西岡徹人さんと出会ったことがきっかけです。練習相手をするようになり、一般社団法人SDGsマネジメント立ち上げの際に理事をやらないかと声をかけていただきました。当時、西岡さんとともにSDGsマネジメントの共同代表を務めていた加藤宗兵衛さんともご縁があり、そこからSDGsに深く関わっていくことになりました。

“何でもアリ”な世の中。常識やルールは疑え。

マリコロ:先日も地元の秋田でSDGsに関する講演をされたそうですね。

鈴木:はい。秋田の方から声をかけていただき、「SDGs経営で企業価値をデザインする」というテーマで講演を行いました。これまでやってきた活動を踏まえ、企業のSDGsへの取り組みがいかに企業価値を上げ、社会貢献につながるのかについて話しました。

マリコロ:若手社員から「死ね」と書き込まれた塩味エピソードもありましたが、今後一緒に働くかもしれない若者へアドバイスする場合、どんな言葉をかけますか。

鈴木:世の中何でもアリ、ということですね。

決められたルールや常識などたいしたことではないということです。今私たちが広めているカンガルー出勤もそうですが、昔の写真を見れば子どもを背負って田んぼにいるのは当たり前でした。歴史から見れば、今のように仕事か家庭かという時代はほんの一瞬でしかなく、現代の常識の方が異常かもしれない。それくらいルールを疑って見たほうが良いと思っています。

マリコロ:会社の展望についてはどのようにお考えでしょうか。

鈴木:これも何でもアリ、ですね。当社は多くの社長と繋がりがあるため、現在の事業に留まらず、入社した人の持つ得意なものを新たな事業にすることも可能です。先ほどのビーチバレー選手の入社も当初難しいと思っていましたが、TikTok動画を作って見せてくれたことから動画制作の可能性を感じ、その頃持ち上がっていたお金コミュニケーションアプリ「pring」のYouTube番組の担当として入社してもらいました。このようにデザインや文章など、ものづくりに関わる能力があれば、得意なことを仕事にできる会社なのです。伝えるということは大切です。企業はメディアになるべきだと思っているので、これからは伝える力が必要になると思います。そうなったとき、 私たちはそれを手助けできる存在だと思います。

マリコロ:最後に、事業を通して叶えたい夢を教えてください。

鈴木:「社会のより良い変化の影の立役者になる」です。せっかくなら世の中良くなってほしい。世の中余裕がある人もいますので、そういうところから足りないところへ少しお裾分けしたら良いのではと思うのです。社会全体で子供を育て、人を応援する。そんなことを上手く噛み合わせられたら、未来は明るいかもしれないですね。